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2月20日

息子の入院

もうすぐ二歳になる息子が調子を崩したのは月曜。私が出張で北欧にいるときだった。妻から嘔吐と下痢が激しいと聞かされ、最近はやっているインフルエンザのたぐいかと思ったが、三、四日で治るだろうと考えていた。火曜日の時点では熱も高く、何を食べても戻すか、下痢となってしまう状態。水曜になり、まだ下痢と嘔吐が続くが熱は下がり、やや上向きの兆候が見えたのだが、木曜の夕方になり再び体力が低下したようだ。自力で立ち上がれず、まったく元気がない状態。この日私は午後ずっとマーケット・リサーチ会社とのミーティングで出払っており、夜帰宅途中の車の中で容態の悪化を知る。翌朝金曜に午前中PRエージェンシーとのミーティングを終えてから、近くのGPに連れて行こうと電話をするが留守番電話ばかりでらちがあかず、結局午後に、遠いが日本人向け診療所の予約が取れたので、午後会社を休んでそこに向かった。

 

しかし、日本人の医師に言われたのは、「インフルエンザだと思われるので、なるべく水分を与えて様子を見ましょう。今話題のタミフルは副作用が疑われるので小さな子供にはなるべく与えないというのが医学界の趨勢。イギリスのGPに行っても同じ事を言われて返されるだけでしょう。明日もう一度来てください。そのときの進行具合によって今後の治療方針を考えましょう」とのこと。この時点で息子の体重はおそらく2kgも落ちており、大人で言えば10kgを5日間で失ったようなものだ。目に見えてやせて衰弱している。意識も半混濁状態。これでも様子を見るしかないのかと、仕方なく、そして明日は息子が少しはよくなっているようにという期待を抱きながら家に戻る。なお、この時点で娘も39度近い熱を出し、嘔吐がある。A型インフルエンザとの診断。Calpol  (薬品名Parcetamol) という、イギリスでもっともポピュラーな熱冷ましだけ処方される。

 

そして土曜、衰弱した息子には回復の兆しはなく、また遠路を日本人診療所へ。食べたり飲んだりする元気もなく、もう点滴をしてもらわねばだめだろうと医師にお願いするが、「確かに脱水症状が出ていて思わしくないですね。でもここには点滴の設備はありません。家庭で水分を与えてください。拒否反応などが起こる可能性もある点滴はイギリスでも最後の手段で、簡単にはやってくれませんよ。ここが日本なら入院ものでしょうが、こちらでは救急病院で運がよければ一晩泊めてくれるかも知れません。でも、長時間待たされますよ。それでも行くというなら紹介状を書きましょう。一時間待ってください。

 

果たして、その紹介状を手に再び遠路を戻って自宅近くの救急病院へ。時刻はもう夕方。何時間も待たされるという悪名高いNHS(国営)の救急病院だが、受付をすると意外にも待つほどもなく診察室へ通され、看護士に状況を説明。すると重大さに気づいたのかすぐに医師が大勢集まってくる。意識が朦朧としている息子にみんなが呼びかけて反応を見る。反応がない息子の名前を必死で呼びながら妻は目に涙をためている。脱水が激しいということで、すぐに点滴、そのまま数日間の入院ということになった。幸い命に別状はないようだが、もっと早い時点、たぶん木曜に容態が悪化した時点で適切な処置を施すべきだったのだろう。

 

ここで全面的に責められるべきは当然ながら親である私であるが、しかしながら日本人診療所の医師のコメントに私は危うい思い込みを見て取った。その医師はこう話した。「日本なら即入院しているところだが、医療に対する考え方の違いで、イギリスでは簡単に入院させない。だから地元のGPや救急病院に行っても自宅療養を勧められるだけです。だから様子を見ましょう」と。しかし、結果は逆だった。息子の状態を一目見てまずいと思ったイギリスの医師はすぐに点滴を開始、そのまま入院の措置を取った。もしその日本人の医師が日本にいればやはり、入院措置を取ったのではないだろうか。それが日本では常識だから。それを、「ここはイギリスだから」という思い込みで自宅療養を勧めることの危うさ。日英の間には微妙な医療現場の常識、治療方針の違いがあることは当然。その狭間にいる在英の日本人医師は、時にイギリスの常識の中での治療方針判断を迫られるのだが、日本人医師の考えるイギリス医療の常識というものにはときに間違った思い込みがあるというひとつの例ではないだろうか。

 

もし、私と妻が点滴をしてくれるよう日本人医師にお願いしなければ、そして再び自宅に彼を連れ帰ってむなしい努力をもう一日続けていたらどうなっていたのか。医療でさえ、いざというとき頼りにできるのは自分の判断だけなのだという厳しいレッスンだった。

 

結局、土曜の夜は私は病床の息子の隣で夜を明かすことに。妻はやはり病気の娘を休ませるために自宅へ。今晩日曜の夜は私が自宅、妻が泊まりだ。私や妻も発症こそまだしていないが同じインフルエンザに感染している可能性が高いという。ここで我々までダウンしたらどうなるのか。こういう時は海外にいることの心細さ、実家の両親などの助けのありがたさを痛感する。

 

 

今日のイギリス英語

E&A : Emergency and Ambulance 救急病院のこと。

评论 (7)

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m-oliveさん、
 
娘さんは大事にならずによかったですね。私も娘が一歳のときに原因不明の発疹で病院をいくつも回ったことがあります。医者によって診断は異なり、三種類ほど病名が変わりました。それ以来、私も鵜呑みはしないようにしています。特に子供は代謝機能が不安定な上、言葉ができないので、病気の原因を特定することが難しいようです。ただ、診断があまいほどそれを信じたくて鵜呑みにしがちです。難しい病気と診断されると信じたくない気持ちが先にたちますから。気をつけたいですね。
2 月 24 日
m-olive发表:
お久しぶりです
外国で暮らすことの難しさを考えさせられました
 
子育てをする上で子どもの病気は最も怖いものですね
私にも娘が2歳のときに二分脊椎(にぶんせきつい)
の疑いで1ヶ月ほど気の狂わんばかりに病院という病院を走り回ったことがありました
 
脊椎の異常で体は成長していくのに
下半身の神経はそのままというものです
よく転ぶようになりおしっこの麻痺歩行困難
と大学病院の先生は研修医のチームをよんで
娘はモルモット状態でした
 
結局誤診で、3番目に行った整形外科で
足首と腰の捻挫ということがわかったのですが
本当に怖い思いをしました
 
そのときの教訓で
医者のいうことを鵜呑みにするな
と肝に銘じております
 
インフルエンザの特効薬
タミフルは本当によく効くお薬です
副作用のことが多大に取り上げられていますが
ほかの薬でも出るのとかわらないですよといわれました
17歳の娘は先月インフルエンザにかかりましたが
初期に飲めば2日間で熱は下がりました
 
息子さんは良くなられて本当に良かったこと
お大事になさってください
 
2 月 23 日
ステラさん、
 
ありがとうございます。今回の一件はもちろん日本でも起こりうる話ですが、イギリスの医療事情と日本とイギリスの治療方針の違い(とそれへの思い込み)が適切な処置を遅らせたという意味で、特徴的なケースだと思います。あと、なれない土地だとお医者さんにも気楽に行きにくい(言葉も違うし)という事情もあります。イギリスのNHSは制度として破綻している面があり、国民の評判はすこぶる悪いですね。
2 月 22 日
匿名 的图片
ステラ 发表:
医師の思い込み、こわいですね。動悸が少し乱れながら読ませていただきました。
息子さん、小さな身体で頑張ったんですね。
無事に回復されて何よりです。
最後は自分の判断・・・・日本に居ても、そんな状況に遭遇した
子供を持つ方もおられるでしょうね。
イギリスの医療の現状にもブログを拝見して、正直驚いています。
(知らなかったので)
ご家族の皆さん、くれぐれもお大事にしてください。
2 月 22 日

10tsumaさん、宇宙さん、

 

おかげさまで、息子の回復は順調で、昨日無事退院することができました。まだ足元がふらついたり危ういところもありますが、今は食欲も旺盛で、失った体重を取り戻す勢いで食べています。一時は命の危険まで心配したのですが、なんか一度よくなってしまうと、あれだけ深刻だったのがうそのようで、少々拍子抜けしてしまうほどです。結局ウイルスが胃腸に感染した事から引き起こされた強い脱水症状という診断でした。最近イギリスではとても流行しているようでうす。一口に脱水症状といっても種類があり、ただ水を飲んでもさらに悪化させるだけという脱水症状もあることを今回初めて知りました。いずれにしても、子供の体調の変化には母親が最も敏感なので、妻の勘をもっと大切にして判断しないとだめだと改めて思いました。お騒がせしました。
2 月 22 日
こんばんわ、 親の勘は重要ポイントですね。 そうそう、日本のTV番組で、タミフルは、解熱作用はあるものの、インフルエンザの予防や治癒には、ほとんど関係ないとのこと。また、うがい・歯磨きでの、口内の粘膜をきれいにしておくことが、ウィルスの増殖を防ぐ高価が期待されるそうです、。 奥様、お疲れが出ませんように、。 そちらには、ホメオパシーを取り扱っているファーマシーが多くあると思いますけど、イザという時の為に、数種類のレメディを常備されるのも一案です。また、同様の薬局で、プロポリス(子供には、子供用。)も、免疫力を保つには効果的です。また、私は、自分用に、 ECHINALYT/ Fight  Colds and Flu というドロップ(液体)を常用していました。 病院の医師達が、即、判断してくださってよかったですね。 お大事になさってください。
 
2 月 20 日
 手に汗して読ませていただきました。
息子さん、苦しかったでしょうね。。。
今も頑張っておられるんですね…。(涙…)
入院され、最善の治療で一日でも早く元気になられることを祈るばかりです。
 TIさんのご判断はよかったですね。
あとから考えると木曜日の段階で…という後悔はおありになるかと思いますが、医師の説明・ここはイギリスであるということ、子供の病気は予測がまったくつかないなど考えると私もそこでは同じような判断をしていたと思います。
“医療でさえ、いざというとき頼りにできるのは自分の判断だけなのだという厳しいレッスンだった。”
共感します。↓にも書かせていただきましたようにうちの息子の場合は脱臼でしたが、“ただの捻挫”と診断され、“それは違う!”と病院を駆けずり回る私達の姿に周りのマケドニア人は???という感じでした。
周りの人に迷惑を掛けましたが、駆けずり回ったかいがあり、脱臼と診断され修復して回復したのですから…。
(医師の誤診、周りの冷ややかな目…。に一瞬私は“タダの捻挫?考えすぎ?”と、思ってしまったのですが、主人は周りがなんていようと間違いないと思うし、自分達が納得できるまで診察しに回るのは当然だ!実際、息子は痛いと行って痛みが止まってないんだから!と言われました。)
 加えて、お嬢様、TIさん、奥様も心配です。
奥様・TIさまにいたっては、下の息子さんのご心配・お嬢様の看病・そして自分自身。。。
 TIさんご家族のご回復をお祈りしています。
 なんとお言葉をお掛けしてよいのかわからず…すいません。。。
長々と失礼しました。
コメントの返信は不要ですからね。
2 月 20 日

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